最も注意すべき舌の悪性黒色腫
舌にできた黒いシミについて調べる時、最も不安を煽る言葉が「悪性黒色腫(メラノーマ)」でしょう。これは皮膚がんの一種で、メラニン色素を産生する細胞(メラノサイト)ががん化したものです。皮膚にできることが多いですが、ごく稀に口の中の粘膜、特に歯茎や上顎、そして舌に発生することがあります。口腔内に発生するメラノーマは非常に稀な疾患であり、舌の黒いシミがすべてこれに当てはまるわけでは決してありません。しかし、極めて悪性度が高く、早期発見・早期治療が極めて重要であるため、その特徴を知っておくことは無駄ではありません。悪性黒色腫を疑うべきサインは、皮膚がんのチェックで用いられる「ABCDEルール」が参考になります。A(Asymmetry)は形状の非対称性。シミの形がいびつで、左右対称でない場合。B(Border)は境界の不明瞭さ。シミの輪郭がギザギザしていたり、周囲の粘膜に色が滲み出すようにぼやけていたりする場合。C(Color)は色の濃淡。色が均一な黒ではなく、茶色や青、白などが混じった、まだら模様になっている場合。D(Diameter)は大きさ。直径が6ミリを超える大きなもの。そしてE(Evolving)は形状や大きさの変化。短期間のうちにシミが大きくなったり、盛り上がってきたり、表面から出血したりするような変化がある場合です。これらの特徴に複数当てはまる場合は、単なるシミや血豆ではない可能性を考え、速やかに専門医の診察を受ける必要があります。過度に恐れる必要はありませんが、知識として持っておき、万が一の際の早期行動に繋げることが、自分の健康を守る上で最も大切なことです。