舌に現れた黒いシミ。その原因は、病気や怪我だけでなく、あなたが日常的に摂取している薬や、何気ない生活習慣の中に隠れているかもしれません。特に、徐々に現れたり、色が広がったりするタイプの黒いシミは、こうした外的な要因が関係している可能性があります。まず考えられるのが「薬剤による色素沈着」です。一部の抗生物質(ミノサイクリン系など)、抗精神病薬、抗不整脈薬などの中には、長期的に服用することで、皮膚や粘膜に色素沈着を引き起こす副作用を持つものがあります。もし、何らかの薬を長期間服用していて、舌の黒ずみが気になり始めたら、自己判断で服用を中止するのではなく、必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。また、ビスマス製剤を含む一部の胃腸薬は、舌の表面で硫化ビスマスを生成し、舌を黒く変色させることがあります。これは服用を中止すれば元に戻る一時的なものです。次に、大きな原因となるのが「嗜好品による着色」です。代表的なのが喫煙です。タバコに含まれるタールやニコチンは、舌の表面にある糸状乳頭に沈着し、舌を茶色から黒っぽく変色させます。これは「喫煙者メラノーシス」とも呼ばれ、長年の喫煙習慣がある方によく見られます。同様に、コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーといった色の濃い飲食物を頻繁に摂取することも、舌への色素沈着、いわゆるステインの原因となります。これらの生活習慣による着色は、健康上直接的な害があるわけではありませんが、見た目が気になる場合は、禁煙や摂取頻度の見直し、そして舌ブラシなどによる丁寧な口腔ケアを心がけることで、ある程度の改善が期待できます。舌の黒いシミは、あなたの生活を映す鏡なのかもしれません。